昨年12月、新潟県の高野連が、故障予防などを目的に、投手の投球数制限を導入すると表明しました。

 かねてより、いずれは検討すべきとの認識があった日本高野連は、独断専行した新潟県連に、とりあえず取り下げてもらったうえで、今月に、関係者を集めて「投手の障害予防に関する有識者会議」を開催したのです。

 報道によれば、現場で指導している強豪校の指導者たちは、投球数制限はチーム規模で不公平が生ずるとか、高校生がすべてプロを目指しているわけではない。さらに、延長戦の制限も反対だったなど、指導者自身の思い入れ発言が否めません。また、整形外科医や競技経験者等からは、投球数制限だけでなく、日程調整など様々な対策を検討すべきとの意見が多かったようです。

 ところがすでに、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の会長が、東京五輪後に開催する野球の国際大会は、すべてのカテゴリーで「9回制」に替わり「7回制」を導入すると表明しています。その理由は、パリ五輪で野球・ソフトボール競技の除外が決まったことを受け、野球の本場である2028年ロサンゼルス五輪で復帰を果たしたいからでしょう。

 さらに、野球の裾野を世界に広げるため、5人制野球の普及にも力を入れるとしているのです。

 近年は、オリンピックの競技事情が影響して、7人制ラグビー、3人制バスケ(3×3)等にみられる競技小型化や、セット数減少、競技時間短縮による放映コンパクト化が進んでいます。

 その是非はともかく、日本の高校野球は、プロ野球同様の用具とルールで行われ、それどころか、大会ではプロ以上の過酷な日程を消化しています。その上、中学の軟式ボールから、高校での重たい硬式ボールに替わる生徒には、成長途上期において、一気に肩・肘への負荷が強まる時期になっているのです。

 さらに、日本における青少年期の野球環境は、一般的に、中学3年、高校3年、大学4年と、学校中心に分断されて、指導者が変わることによって指導期間ごとに好結果を求められます。特に、高校野球部の指導者は、甲子園大会が究極の目標であり、部員の将来を見据えた指導過程は二の次になります。これが、「甲子園優勝投手は大成しない」といわれる所以なのです。

 投球数制限が不公平、不均衡というなら、「7回制」と「延長短縮」を導入すれば、ほぼ公平性を保つことができ、参加チーム数も増やすことができます。

 また、日程を緩和したいなら、甲子園球場を諦めてドーム球場にすれば、雨天予備日を省略できて休息日を増やせるだけでなく、熱中症の心配もなくなります。球場賃料等は工夫すればいいことでしょう。

 その他にも、年間の大会数を増やし過ぎて、現在は一年中大会が開催されています。明治神宮野球大会と国民体育大会は、高校の部を外すべきです。

 結論、高校野球は、汗と涙で土まみれの青春ドラマであり、延長は決着が着くまで死力を尽くすのが若者像だと、古き時代への郷愁にこだわる先輩筋や、伝統を死守しようとする高野連や主催新聞社等に引きずられないよう、教育関係者には大胆な改革を提言してほしいと願っています。