思い返せば、2020年五輪招致での贈賄疑惑に関して、当時のJOC竹田会長の関与が、いまだにフランス検察による捜査で続いています。さらに、その過程において、複数のJOC関係者が係わっていたとする情報も流れています。

 疑惑を受けた竹田氏は、任期満了で退任(実際は辞任)して、新たに山下泰裕氏が会長になりました。その山下会長が、真っ先に取り組んだのは、理事会を非公開にするという仕事です。理由は、「理事が本音を言い合い、議論を活発にするため」と説明していますが、なにか、贈賄疑惑のトラウマになっているとしか思えません。

 また、韓国が、旭日旗を五輪会場への持ち込み禁止を求めたことについても、組織委員会と官房長官が異口同音に、「旭日旗自体に政治的意味はないとして、会場持ち込みを禁止しない」と即断し、その後に、橋本聖子五輪担当相も、間髪入れず追認しています。

 その際、JOCは報道の取材に対して、「そのことについては、大会組織委員会に聞いて下さい」と答えたのです。なんと情けないことか。JOCは、役目を忘れたといわざるを得ません。

 この件は、先月、「まもなく、オリンピック休戦が国連で決議される!」に書きましたが、旭日旗取扱いの判断について、オリンピック憲章の理念に従ってJOCが主導すべきであり、組織委員会に任せるべきではないでしょう。

 結論的に言えば、五輪は対立を解決する場ではありません。政治的見解の異なることを、五輪会場に持ち込まないということです。それを主張して国民に説明するのは、オリンピック・ムーブメントを付託されているJOCの役割なのです。

 しかし、パラリンピックのメダル意匠や、聖火リレー説明用の日本地図へのクレームは、毅然と説明すべきことは言うまでもありません。混同しないでください。

 ですから、平昌冬季五輪開会式における、韓国と北朝鮮合同チームの入場行進に際して、竹島付きの朝鮮半島地図を掲げて行進しようとしたことは、政治的見解が異なる問題を持ち込んだとして、IOCは警告したのです。来年の東京五輪の開会式においても、旭日旗を観客席に一切持ち込まないよう、注意喚起することもJOCの責務なのです。

 さらに、ここ数日、報道にさらされている「テコンドー問題」についても、急な暴発的問題ではなく、東京五輪を目指す選手の訴えがすでに届いていたはずです。スポーツ庁や日本スポーツ協会(JSPO)ではなく、もっと早く、JOCが選手保護のため調査や指導に動くべきだったのです。

 少なくとも、五輪に抵触する問題には、JOCが関与し適切な判断を期待したいと思います。そのためにも、JOC理事会での真剣な議論を公開して、国民の評価を受けるべきではないでしょうか。