サブタイトルは復興五輪から克服五輪へ!

 先日、東京大学やドイツのハノーファー大学などの国際研究チームが、東京五輪で使用予定の全会場の放射線量を測定したところ、過去に開催された五輪会場の平均よりも下回っていたとの報道がありました。

 東京大学の小豆川助教は、「海外では『東京は放射能で汚染されている』という認識の人が依然として多い。こういった誤解・偏見はオリンピックを開催する時に大きな問題になると思って研究を始めた。自明だが、全会場の測定をした結果、福島第一原発事故の影響が強く出ているところはないという判断になった。日本にいても海外にいても、思い込みではなく、データに真摯に向き合って考えていく必要があるのではないか。」と述べたそうです。

 この報道を聞いて「あまりに遅いよ、今頃!」と残念に思います。東大の先生にではなく、組織委員会や国及び東京都に対して、なぜもっと早く、このような調査研究を依頼しなかったのか、問いたいほどです。

 この「東京2020大会」は、招致段階から、ずっと復興五輪というサブタイトルを付けられてきました。当時の「立候補ファイル」には、「日本が東日本大震災から復興している姿を発信し、世界への返礼の場とする。」という目標を掲げていたのです。

 この「復興五輪」というサブタイトルは、もともとIOCへの提案や約束ではなく、国内向けのメッセージでした。そのため、組織委は、野球会場や聖火リレー出発など、地元民が喜びそうな五輪イベントの一部を、福島、宮城等に振ったわけです。中には、「ボートコース」を誘致しようとした無理筋の一件もありました。

 ところが、いまだ、東北の食材に対して「輸入停止」か「限定規制」を課している国・地域が、今年3月現在で、韓国や中国など8カ所残っています。今年の開催であれば、選手村の食材をすべて東北産にすることもできず、多少の復興コーナーを設定して不作為をフォローしただけに終わったのでしょう。韓国では、選手村の食材は汚染されているので、入村したくないとのメッセージもあったほどです。もちろん政治的意味合いも含んでいますが・・・

 この「復興五輪」違和感については、2016年に『「復興五輪」をめぐる発言に違和感あり(その1)』をはじめ、私は何度もこれまで指摘してきました。ぜひ、タグ「復興五輪」で検索して、当時の経緯を再読してみてください。

 また、今夏に予定通り開催されていたとしたら、復興食材だけでなく、酷暑等の気象対策が十分だったかの検証もできるはずです。

 私論でいえば、五輪マラソンの札幌移転騒動に際して、パラマラソンが東京コースのままであることに異論を述べてきましたが、パラ大会が今夏開催であれば異常な暑さに見舞われ、屋外競技のパラ選手に相当な被害者が出た可能性は否定できません。

 来夏の延期五輪に対して、組織委は、単に「簡素化」「経費削減」のアピールをするだけではなく、未達成課題や準備不測等を十分検証して、延期したから克服できたと評価される付加価値を実現してほしいと願うばかりです。