五輪開催を明言したコーツ氏の思惑!

 1年延期となった「東京2020大会」について、IOC副会長のコーツ氏が、「新型コロナウイルスの状況に関わらず五輪は開催するだろう。東京五輪は新型コロナに打ち勝った大会にもなる」と、AFP通信の取材で答えたと伝わりました。

 東京大会の調整委員長として準備をサポートしてきたコーツ氏らしい、時期を得た発言です。

 この時期とは、安倍首相の突然の辞任が背景にあります。実は、世界のスポーツ関係者の中で、延期となった東京大会の開催を不安視する状況は、ずっと続いていました。

 その最中に、1年延期の提案をして「開催に責任を果たす」と世界に公言していた安倍首相が、病気を理由に突如辞任するとの報道があり、日本側に中止の思惑が生まれるのではないかとの憶測が、世界の関係者に広まったとしても不思議ではありません。

 コーツ氏が、独自にすべてを察して危機感を覚えたのではなくとも、もしかしたら組織委員会からの以心伝心があったのかもしれません。

 加えて言えば、コーツ氏の今回の発言は、「中止は避けたい」「再延期は皆無」であることを、改めて世界に公言したといえます。

 実は、今年7月の小池都知事再選の際に、報道機関が1年延期した五輪の開催可能性について、「実施」「中止」「再延期」の選択肢を示して都民の意識調査をしました。しかし、これは明らかにミスリードです。

 以前よりIOCと組織委は、再延期を完全に否定していましたが、知事選だけでなく、その後に実施された意識調査においても、ことごとく「再延期」を選択肢に入れ続けており、強い違和感を持っていました。

 今回のコーツ氏発言は、国内外にあらためて再延期の選択は皆無であり、来夏においてどのように開催すべきかだけの検討をしていると釘を刺したのです。

 すなわち、安倍首相の「完全な形で開催」の言質は、どんな形であれ「来夏に必ず開催」することであると、念押ししただけのことです。

  国内外のプロスポーツ界をみてください。リーグ戦再開のはじめは、徹底した防疫を前提に無観客から始めて、徐々に観客数を増やし、そのフォローは、映像の充実で補完していく戦略を続けています。それで開催戦略が十分奏功しているではないですか。

 しかし、日本の組織委は、「無観客」や「観客減数」には、いまだ明快に言及せず、微々たる簡素化を積算して国内ではそのリストを公表していますが、おそらくIOCとは、大会の開催方法について重要な交渉が進んでいると察します。

 組織委はIOCと共に、早く国内外に向けて、最悪は「無観客」や「大会規模の縮小」でも、来夏には必ず開催すると明言すべきです。そのうえで、今後のコロナ渦の推移を見定めながら、観客入場条件など段階的な方針緩和を提案していくべきではないでしょうか。

 最終的には、「無観客」のまま、あるいは「5割観客」まで緩和されるか、その結果はわかりませんが、明白な条件設定をもとに情報開示をしながら大会の簡素化内容を提案し、国内外から理解を得続けるべきです。すなわち、最縮小の開催案から徐々に緩和策を提案していく方針を取るべきだと思います。

 加えて言えば、先日の「日刊スポーツ」誌が掲載した、組織委の「簡素化リスト」によれば、「自治体が購入したチケットを児童生徒に配布し観戦する『学校連携プログラム』は見直し」とありますが、これは逆であり、観客を入れる場合は、日本の子どもたちを最優先に入場させるべきでしょう。

 なお、 コロナ渦の推移をみながらの準備作業の変更は、厳しく困難さを伴いますが、適時に変更を説明しながら、国内外からの賛同を重ねていくべきです。

 もし、国内に拡大した現在の中止論が、まったく改善されないまま開催を強行すれば、開催中に反対デモが要所で繰り広げられかねません。民主国家日本が、その弾圧をできるはずもなく、近代五輪史上に禍根を残すことになります。組織委には、その兆候を無視しないで欲しいと願うばかりです。