「東京2020+1大会」の評価は!

 2020年夏季に開催予定だった「第32回 東京オリンピック・パラリンピック」は、昨年の3月24日に1年延期となり、「東京2020+1」大会として再準備を始めましたが、新型コロナ感染問題は沈静化するどころか拡大し続けました。
 そのため、五輪開催に対する国民の賛否論は揺れ続け、マスコミ等のアンケート調査で中止論や再延期論が強いまま、7月23日の開会式を迎えたのです。(なお、アンケート調査が、「開催」「中止(実は返上)」「再延期」の3択で、国民にアンケートを取り続けたことは「ミスリードだった」との私的主張は、すでに【第26編】【第28編】などに書いてきました。)結局、日本側には「どのように開催するか。」という選択肢しかなかったのです。
 その賛否に揺れ動いた「オリンピック」の開催に対して、国民はどのように評価するのか注視していましたが、とりあえず、開会式のテレビ視聴率は56・4%(NHKの平均世帯視聴率)だったようです。
 いうまでもなく、視聴率が五輪開催の賛否率を表すものではありませんが、閉会式(NHKの関東地区視聴率46・7%)や各種競技まで含めて、比較的高い視聴率が続いた結果をみると、国民には概ね好意的に受け止められたのではないかと推察します。
 その結果なのかどうか、開催前の「中止・再延期」が圧倒的だった意識調査と、大会の高視聴率との比較について、検証や評価をしたマスコミはほとんどなく、ネット上では「手のひら返し」と揶揄する書き込みも見られました。
 また、8月8日に「オリンピック」が閉会式を迎え、その15日後の24日に「パラリンピック」の開会式が始まるまでの間に、組織委員会等に対する様々な問題(役員・報道関係者のルール違反、弁当の大量廃棄、バッハ氏の不要な行動、等々)が明らかになって、マスコミは厳しく指弾しました。
 しかし、オリンピック期間中に、組織委員会等の失態が続いたことを理由に、「障がい者のほうが、コロナ感染リスクの危険度が高いと指摘し、パラリンピックこそ中止すべきだ。」という論調は、ほとんど聞こえてきませんでした。なぜでしょう?
 なお、パラリンピック開会式の世帯平均視聴率は23・8%(関東地区、速報値)であり、閉会式中継は20・6%だったようです。
 ただ、奇妙な批判がありました。コロナ対策分科会の尾身会長が、「IOCのバッハ会長は、パラリンピック開会式に来るな。リモートで十分だ。」と国会審議の中で強く批判していましたが、あの発言には「パラリンピックこそ中止すべきだ。」と揶揄する意図があったのでしょうか。その意図の有無はともかく、国会答弁なのに、尾身会長に対してIOCとIOCの関係やIOC会長が招待される理由を、政府関係者が説明していなかったようです。
 さて、「第32回 東京オリンピック・パラリンピック」の行程はすべて終わりましたが、厳しく議論し説明責任を果たしていかなければならないのはこれからです。まずは、1年延期の末に開催されたことを含め、残された債務処理と新設した五輪競技施設の将来的な維持管理が問題になります。
 東京五輪の招致・開催を主導した「東京都(招致委員会・組織委員会を含む)」や「JOC」、それに、サポート及び牽引した「政府(スポーツ振興センターを含む)」、開催に協力した「道・県の自治体」、「産業界(特に、電通)」などは、それぞれの立場で経費問題を含む様々な検証をした上で、総合的な「報告書」を国民に示して、様々な疑問や批判に対応する義務があることは、いうまでもありません。