運動部活動は、休養日確保と時間制限で総量抑制する一方で、競技力向上を煽り立てるという相矛盾する現状を紹介してきました。

 もう一つ運動部活動に影響を与えている懸念すべき煽り立てがあります。それが「国民体育大会(以下、国体)」への中学生出場です。

 中学生の出場は、競技団体からの熱望を受けて、昭和62年に当時の文部省と日本体育協会(現在の日本スポーツ協会)が協議の上、中学生の国体参加基準を決めます。

 国体に参加する生徒には、学校教育活動の一環として授業を出席扱いとし、学校管理下での災害共済給付制度を適用して、派遣経費は都道府県が負担するという条件を設定しました。

 周知のように、中体連、高体連、高野連の大会は、春期、夏期、冬期の長期休暇に集中して開催するのが常識です。ところが、国体は、概ね9月後半から10月上旬に開催されています。冬季大会は1月下旬から2月上旬です。

 中学校での教育活動にとって重要な時期に、宿泊も含めて国体に参加させることを、文部省関係者がなぜ容認したのか、いまだ疑問に思っています。

 結局、水泳競技の競泳、陸上競技、体操競技、スケート競技のフィギアを対象に、中学3年生と高校1年生を「少年B」の部として設定し、3~5年の期間で試行してみようと始まりました。

 しかし、試行とは名ばかりで、平成6年まで伸ばした末に、ほとんど検証もせず、すべての試行競技を完全実施することに決定します。まさに予定通りだったのでしょう。

 これをきっかけに、平成18年国体には、サッカー、卓球、テニス、カヌー、ゴルフ、ボウリングの6競技も加え、平成19年には、ソフトテニス、フェンシングが、平成20年からは、アーチェリー、スキー、セーリング、馬術を、平成21年において、水泳の飛込・シンクロ、山岳が加わり、ほぼすべての国体競技に「少年B」種目が設定されました。

 それだけではありません。国体の予選会と称する競技大会がどんどん増設されています。まさに、様々なレベルの競技大会が一年中どこかで開催される賑わいになります。

 例えば、昔は、中学生対象の水泳大会は夏季に限られていましたが、いまや1年中、参加できる試合・大会が設定されていますので、運動部の活動は緩む時期がありません。

 さらに、旧日体協は、平成25年に「21世紀の国体像」を策定したなかで、国体のコンセプト「アスリートの発掘・育成・強化」を強調して、中学2年生以下を国体に引っ張り出すという、更なる低年齢化を検討しています。

 ついでに言及すれば、2020年東京五輪開催が決定したことを受け、国体ではこれまで実施していなかった五輪の競技・種目の導入を決め、水球、オープンウォーター、ボクシング女子、ビーチバレー、トランポリン、レスリング女子、ウエイトリフティング女子、自転車女子、ラグビー女子、トライアスロンが新種目として国体に追加されています。
 当然ながら、競技団体は中学生の参加を求め、特に、体操、競泳、卓球などは、中学2年生以下の参加を働きかけており、その検討が進んでいます。

 このような潮流を奨励しつつ、運動部活動に対してガイドラインの総量抑制を強要しても、学校現場が遵守するとは到底思えません。