スポーツ庁が策定した、NF向けの「ガバナンスコード」について、理事の就任時年齢制限や任期10年間、及び、利益相反行為の規制等について、その実効性と効果に疑問を呈してきました。

 もう一点、指摘しなければなりません。それは、新コード(倫理規定)に見合う制度設計を、忠実に実施した場合の財源問題です。

 コードによれば、まず、外部理事(25%以上)、外部評議員を導入するとして、外部理事は、弁護士、会計士、学識経験者、企業経営経験者、豊富な国際経験者を任用すること、また、その役員候補者の「選考委員会」は、内部職員だけでなく、複数の外部有識者を配置すべきと例示しています。

 さらに、「コンプライアンス委員会」の構成員には、弁護士(1名以上を厳命)、公認会計士、学識経験者等の有識者を配置して、定期的に開催するだけでなく、相当量のコンプライアンス教育事業も命じています。

 次に、法律、税務、会計等の専門家のサポートを日常的に受ける体制を構築すべきとして、専門家の選定に当たっては、スポーツに関する業界動向や適用のある法律・税制・会計基準の改正等に通じた専門家(弁護士、税理士、公認会計士等)の人選を指示しています。

 また、独立した諮問委員会として、「利益相反検討委員会」を設置することについても、外部有識者を主要な構成員に入れなさいとしています。

 さらに、通報制度は必須であるとして、その運用体制は、弁護士、公認会計士、学識経験者等の有識者を中心に整備することと命じています。

 その通報を受けた場合は、弁護士等の有識者を含む、経営陣から独立した中立な立場の者で構成される紛争解決機関(不服申立委員会等)を設けて、いわゆる第三者委員会が調査しなさいというものです。

 調査結果を受けた場合の懲罰制度の適用についても、弁護士等の有識者を含む、経営陣から独立した中立な立場の者で構成される処分機関(倫理委員会等)を設けて、その構成員は、調査機関の構成員と兼任しないこととしているので、別の専門家への依頼が必要です。

 ひとつのNFに、合計何人の外部専門家(弁護士、税理士、学識経験者等々)へ依頼しなければならないのでしょうか。一部に人材がダブっていたとしても、膨大な経費が掛かります。

 それとも、すべてボランティアでお願いできるというのでしょうか。本業である弁護、税理の専門家が無償ボランティアでの協力はありえません。

 すでに、(その2)で紹介したように、日本のNF組織は、正規雇用者数4人以下が35.4%を占め、役員等はすべてボランティアであることを、スポーツ庁も認識しています。さらに財政規模に至っては、年間総収入1億円未満が、全体の22、6%と最も多く占めているのです。

 このような大多数の脆弱なNFに、プロ業務を外部から依頼できる財源を生み出せると思いますか。

 もちろん、本コードの説明文では、末尾で「~ことが望まれる。」と希望的言質を盛んに使い、団体の現状に応じて段階的な制度構築を強調していますが、そのために、必要な財源保障にはまったく触れていません。

 多くのNFは、新たな人件費が確保できなければ外部有識者を依頼できず、このままでは、コード基準の遵守を定期的に自己説明させられ、少しでも進捗しなない場合、統括団体からの除名や補助金削減がチラつくのです。

 そこで希望したいのは、このコード設計において必要な外部専門職員を、JOCかJSPOに適正人材の登録制度を作って、NFの依頼を受けて派遣してはどうだろうか。

 その定額化した派遣業務の財源は、スポーツ庁が、2020年東京大会に向けて現在配分している「競技力向上事業助成金」を、20年後に減額(終了?)させるのではなく、一部財源を大会後に使途変更して、スポーツ団体の近代化に投入すべきではないでしょうか。

 そのような財源保障と制度サポートがなければ、脆弱なNFに、自力による理想的な組織づくりを望んでも、永遠の命題になり、弥縫策に終わる懸念が大きいと思います。